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2005年9月10日

高岡英夫とは

 高岡英夫(たかおか ひでお、1948年~)は、身体運動の研究者・指導者であり、武術家です。最近では、心身を緩めることで疲労回復、健康増進、能力強化などを図る体操、「ゆる体操」の考案者として、テレビや新聞・雑誌などに登場する機会も増えています。

 身体運動研究者としての高岡のユニークな点は、次の三つです。

 1. 正統的な学問の方法と成果を継承していると同時に、独自の方法と体系を創出していること。

 2. 自ら極めて高度なパフォーマンスを体現すると同時に、自己のパフォーマンスに潜む原理を学問的に対象化し、理論化していること。

 3. 研究成果の応用の営利事業化に成功していること。


1. 学問的正統性と独自性

 身体運動に関わる理論は、大学等を拠点とするアカデミックな研究者によってだけでなく、武道・武術、体操法、身体調整法を始めとする、さまざまな身体運動文化の実践家によっても提出されてきました。高岡の理論も、高岡自身の修業と実践をベースに創出されたという意味で、実践の世界から提出された身体運動理論の一つと言えます。しかしその理論は、独創的であると同時に学問的正統性を有しているという意味で、他の多くの実践家が提出した理論とは、一線を画するものです。

 高岡の理論に学問的正統性があると判定できる理由は、次の三つです。

 (1)既存の学的理論との関係が明示され、概念が明確に定義されている。

 高岡は、自らが開拓した学問体系を「運動科学」と名付け、既存のスポーツ科学との関係を、物理学や言語学における「要素主義から関係主義へ」の発展と比較しながら、厳密に提示しています(※1)。また、「身体意識」や「ディレクト・システム」などの独自の概念についても、明確に定義した上で使用しています。

 (2)自然科学的手法を適切に取り入れている。

 高岡は、身体運動研究における自然科学的手法の限界を明示した上で、自然科学的なスポーツ科学の手法による研究も積極的に行っています(※2)。

 (3)普遍性がある。

 実践家が提出する理論は、一般に、本人が属する組織や種目の特殊性や、本人自身の肉体的条件の特殊性などに制約され、「あらゆる身体運動の解明に役立つ」という意味での普遍性に欠ける傾向があります。高岡の理論は、あらゆる種目のスポーツ、武道に留まらず、音楽や舞踏などの各種芸術、さらにはビジネスや科学研究など、通常は「身体運動」に含まれない分野に至るまで、あらゆる領域に適用され、各分野の専門家によってその有効性を認められています(※3)。


2. 高度なパフォーマンスの体現と、自己のパフォーマンスの学問的対象化

 高岡は、幼少時から常識外れの身体能力を発揮していたようです(※4)。また、40歳近くなってからスキーを独習し、雪上練習15日で専門指導員に匹敵する実力を習得しています(※5)。体現しているパフォーマンスのレベルが常人とは隔絶してることに加え、高岡はその高度なパフォーマンスを学問的に対象化し、その構造を理論として提出しています。実践家としての能力と研究者としての能力が、いずれも超一流の水準で同居していることは、きわめてまれなことです。


3. 研究成果応用の営利事業化

 高岡は、「株式会社運動科学総合研究所」(※6)を設立し、自らの理論に基づく指導を営利事業化しています。この事業は、株式会社化されてからすでに10年目に突入しています。高岡の理論に基づく指導が事業として成功していることは、その理論の有効性を証明しているだけでなく、高岡の指導者・経営者としての能力の高さも証明しています。実践、研究、指導、および経営のすべてにおいて、これほど優れた能力を発揮している研究者を他に見つけることは、ほぼ不可能と思われます。


※1 「運動科学」と「スポーツ科学」の関係については、高岡英夫『武道の科学化と格闘技の本質』(1989年、恵雅堂出版)、高岡英夫『鍛練の理論』(1989年、恵雅堂出版)等を参照。

※2 身体運動研究における自然科学的手法の限界については、高岡英夫『武道の科学化と格闘技の本質』(前掲)、高岡英夫『鍛練の理論』(前掲)等を参照。自然科学的手法による研究の例としては、高岡英夫『極意化の時代―高岡英夫の極意要談〈2〉』(1997年、BABジャパン出版局)のp.189に掲載されている、「レギュラームーブメント」の突きと「フリームーブメント」の突きにおける剣先速度の変化の比較など。

※3 高岡の幼少時のエピソードについては、松井浩『高岡英夫は語る すべてはゆるむこと』(2003年、小学館文庫)等を参照。

※4 高岡英夫『高岡英夫の極意要談―「秘伝」から「極意」へ至る階梯を明らかに』(1997年、BABジャパン出版局)、『極意化の時代―高岡英夫の極意要談〈2〉』(前掲)、『ワールドクラスになるためのサッカートレーニング』(2002年、メディアファクトリー)等を参照。

※5 高岡英夫『鍛練の展開』(1993年、恵雅堂出版)p.163~178、高岡英夫『極意化の時代―高岡英夫の極意要談〈2〉』(前掲)p.10~18)等を参照。

※6 ホームページのURLはhttp://www.undoukagakusouken.co.jp/。創立時の社名は「株式会社ディレクト・システム社」。

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